動き
「第1回国際森田療法学会」印象記
清水 信
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1東京慈恵会医科大学・精神医学教室
pp.919
発行日 1990年8月15日
Published Date 1990/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405902900
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第1回国際森田療法学会は高良武久名誉会長,大原健士郎会長のもとに,メンタルヘルス岡本記念財団の後援を得て,1990年4月20日(金),21日(土)の両日浜松名鉄ホテルで開催された。内容は会長講演,2つの特別講演,2つのシンポジウム,一般演題(外国から12題,日本から12題)で構成された。国外からの参加者は,アメリカ,カナダ,中国,オーストラリア,西ドイツ,スイス,ソ連,ノルウェー,ポーランドなどから28名,日本側からは151名が参加,国際色豊かな雰囲気であった。
大原会長の会長講演「森田療法と私」では,精神科医としての第一歩を踏み出してからの人々との出会い,森田療法の研究の思い出,森田療法学会のことなどを演者の独特な語り口で述べ,今後の森田療法の発展のために様々な治療上の創意工夫の必要性が強調された。高良名誉会長の特別講演「森田を継いで後,更に新しい角度から見た神経質症についての私の見解」では,神経質症,適応不安,防衛単純化など演者自身が新たに導入した概念,用語について,91歳という年齢からは考えられない情熱を感じさせる口調で,聞き入る聴衆に語りかけられた。また,土居健郎聖路加国際病院顧問は「思想の矛盾について」と題して,精神療法家としての実践の中で演者が感じてきた森田学説に対する共感について語られた。森田の言う思想の矛盾は,不可能を可能にしようとする人間の思い上がりであり,フロイトの「万能感」に通ずる考え方であることが症例を通じて指摘された。
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