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編集後記
T. I.
pp.868
発行日 2019年7月15日
Published Date 2019/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405205873
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すべての人間にとって人間関係は一番ストレスに感じることであり,その他にも家事や仕事,ペット,災害,病気など悩みの種は尽きない。器質性,内因性といわれる精神疾患においても,以上のような環境因子がなくなるわけではないので,当然精神症状を理解するときには環境因を考える必要がある。一方,心因性といわれる精神疾患では心因を理解し,主治医は患者と一緒に絡まった糸をほぐす作業が特に必要である。心因性精神疾患という言葉があまり使われなくなって久しいが,精神疾患における心因が軽視されているのではないかという強い懸念を感じる。本特集では,30年以上前の精神医学では常識であった心因と内因の問題を,わが国の代表的な精神科医達によってさまざまな観点から論じていただいた。心因と内因の問題は単純な2分論ではなく,もっと複雑な交互作用を想定する必要があるかもしれない。本特集は,とても読み応えのある本格的な精神医学・精神病理の特集であり,内因と心因の問題を読み解くことにより精神疾患の本態を深く理解できると思う。わが国から内因と心因の問題を再提起し,DSMやICDが主流の精神医学に影響を与えることを期待したい。このような温故知新は世界を見渡しても,精神病理が盛んなわが国で一番達成の可能性が高いと思う。展望の「オープンダイアローグ」は,内因性精神疾患である統合失調症の患者の気持ちを大切にする精神科的アプローチだと思う。内因性だからといって心因を軽んじないほうがよいし,心因性と決めつけて内因性の可能性を忘れてはいけない。さらに心因と内因の問題を棚上げにして,両概念に目をつぶってもいけない。内因と心因の現代的理解が必要である。
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