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古典紹介
—Philippe Pinel—精神病又はマニーに関する医学=哲学的概論
Traité médico-philosophique surl'aliénation mentale, ou la manie [Richard, Caille et Ravier, Paris, 1801]
浜中 淑彦
1
Toshihiko Hamanaka
1
1京都大学医学部精神神経科
1Department of Nuropsychiatry, Kyoto University Faculty of Medicine
pp.1005-1018
発行日 1984年9月15日
Published Date 1984/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405203829
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第3章 精神病者alienesの頭蓋形の欠陥に関する解剖学的研究
I.manieの本態は大脳の器質性損傷か?
ごく当然な一般的見解によれば,悟性諸機能の障害alienation des fonctions de l'entendementの本態は,頭部の何らかの部分の変化又は損傷であるとされ,その結果Bonnet,Morgagni,Meckel,Greding訳注1)が次々に発表した研究成果が権威あるものとして引用された。このうちドイツの著者Gredingは最近,この疾患の本性にいくばくかの解明をもたらすための数多くの身体解剖を行った。このため,manieを最も多くの場合治療不可能とみなして精神病者を単に社会から隔離して,すべての病弱が必要とする助力を彼らに拒むという偏見が生まれた。他方イギリスやフランスでは数多くの治療がもたらされ,多数の症例において精神的療法traitement moralの成功が確認され,身体解剖の結果何らの器質性損傷も明らかにされない症例がいくつか知られるようになった。manieを純粋に神経性疾患affection purement nerveuseとみなすあるイギリスの医師の著作(原註1)は,最初に挙げたのとは逆の見解を確定しているように思われる。6年来の私の研究の主たる対象の一つは,各病院で集めた一連の数多くの事実によって,上に述べた如き不正確な点を除去することであった。本書に引き続いて,精神障害で死亡した人の大脳,脳膜,その他の身体部分の特殊な状態に関する私の研究結果を報告することになろうが,本項では頭蓋形の欠陥のみを考察するにとどめたい。
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