巻頭言
精神科の診療報酬について
道下 忠蔵
1
1石川県立高松病院
pp.344-345
発行日 1984年4月15日
Published Date 1984/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405203741
- 有料閲覧
- 文献概要
国の経済が高度成長から安定成長へと大きく転換し,これまでの行政施策が経済的合理性という視点で見直しを迫られているなかで,14兆円を超えようとしている医療費に対してもその抑制が声高に論じられている昨今である。しかし,精神科医として診療を担当し,毎年大きな赤字を出している公立精神病院運営の現場にいると,現在の診療報酬体系が不合理に思えてならないので,精神科の診療報酬についての愚考を述べてみたい。
これは泣き言になるかも知れないが,大体わが国の精神科医は今まで診療は熱心に行いながら,自分達の仕事に対する報酬のあり方についておおらかというか,無頓着過ぎたのではなかろうかと思う。かくいう私自身も大学病院の助手時代はもちろんのこと,30年代民間精神病院の院長をしておりながら経営については理事長や事務長によりかかり毎日の診療に追われて,その報酬や経営問題にまでは頭が回らなかった。皮肉なことに「親方日の丸」といわれる県立精神病院の院長となり,毎年県議会の決算委員会で赤字の理由等について答弁するようになってから,いまさらのように診療報酬体系の不合理ということ,特に精神科の診療における技術料評価の低さに気づかされた次第である。
Copyright © 1984, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.