特集 カルバマゼピンの向精神作用
巻頭言
躁うつ病に対するカルバマゼピン療法の歴史
大熊 輝雄
1
1東北大学医学部精神医学教室
pp.1244-1245
発行日 1983年12月15日
Published Date 1983/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405203678
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炭酸リチウム療法は,従来有効な治療法に乏しかった躁状態の治療に有効であるだけではなく,躁うつ病相の反復出現を予防する効果をもつという点で,精神医学の歴史のうえでも画期的な治療であると思われる。
しかし,炭酸リチウム療法にも短所がある。そのひとつは,治療のための薬用量と中毒量との差が小さいため,急性中毒を生じやすく,中毒の出現を防ぐためには注意深い血中濃度の監視が必要なことである。また炭酸リチウムは,予防療法のためには長期間連続的に使用する必要があり,長期連用によって腎障害などの重篤な副作用を生じる場合がある。さらに炭酸リチウム療法には,いわゆるresponderとnon-responderとがあり,non-responderに対しては炭酸リチウムはほとんど効果を示さない。したがって,躁うつ病の治療および予防のためには,炭酸リチウムよりもさらに安全でしかも有効な薬物が必要であることはいうまでもない。
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