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昭和52年9月7日,京都平安神宮会館において,頭記のカンファレンスが開催された。海外から,S. S. Kety(米),M. Roth(英),P. Pichot(仏),P. Matussek,H. H. Wieck,G. Huber(西独),H. Rin(中華民国・台湾)らのメイン・スピーカーのほか,H. Selbach(西ベルリン),J. Angst(ツューリッヒ),G. Gross(ルューベック),B. Shopsin(ニューヨーク)ら,また国内各地から100余名が参加した。大阪府茨木市にある頭記財団の学術顧問を委嘱された満田久敏(大阪医科大学名誉教授)と筆者とが,このカンファレンスの企画および執行にあたり,当日の会長・司会者をそれぞれつとめた。本誌編集部からの依頼に応じ,当日のメイン・スピーカーの講演に焦点をしぼって要約を試みるが,広域にわたる内容と「制限紙数」との圧力は筆者にとってあまりにも重く感じられる。それゆえ,拙文に加えて皮相的・断片的な紹介になることを冒頭にお断わりしておきたい。
午前の部はKetyケティ(ハーバード大・マクリーン病院)のBiological Substrates of Schizophreniaと題した講演から始まった。まず基礎的研究面をとりあげ,現在までの「ドーパミン」仮説にまつわる知見を概括し,dopamine-β-hydroxylaseの増減をはじめ,transmethylationによるドーパミン・ノルアドレナリン間のインバランス説を含む幾つかの仮説は,いずれも未だ吟味の余地を残していることを指摘した。同時に,他の神経伝達物質との複雑な関係がほとんど未解明のままである点に注意を向けた。臨床面では,例の養子研究adoption studyの知見を総括し,……環境要因の介入がほとんど完全に否定できる33例の養子とそのbiological familyに限定すれば,分裂病は遺伝性のものと結論できる。その際の遺伝様式は優性・劣性のいずれもみられるが,亜型の規定内容によっては,より明確になる可能性がある。それゆえ,自分達のグループが提唱してきたschizophrenia spectrumの内容自体も,分裂病異種性の見解をとり入れたものに改善すべきであり,その線に沿った臨床・遺伝・生化学各レベルでの多角的な追究が今後の課題である……。
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