巻頭言
精神医学の特殊性?
生田 琢巳
1
1徳島大学医学部神経精神医学教室
pp.690-691
発行日 1978年7月15日
Published Date 1978/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405202784
- 有料閲覧
- 文献概要
精神医学は医学の1分野でありながら,身体医学に関する他の分野とは異なった特殊なものとしてとり扱われてきた。このような精神医学の特殊性とは,要するに精神医学が身体現象だけでなく,物理化学的な現象としてとらえることの困難な精神現象を対象としているということである。そして今も,精神医学や精神医療にたずさわっている人達の中には,この精神医学の特殊性というものをことさらに強調しようとする姿勢がある。
文明の発生から,現在の情報化社会へ到達する歴史の中で,人類は「大きな差があったものを平等化し,絶対的なものを普遍化する」ことをくり返してきた。人類の思想の中で,はじめ地球は宇宙の中心であったが,地動説以来,惑星の中の1つになってしまった。キリスト教的思想の中では,人類は他の動物とは絶対的に違うものであったが,進化論以来,その絶対性は失われた。microの世界では,動物と植物,さらに生物と無生物との違いも明らかではない。そして情報化社会の現在では,macroの世界においてすら,生物と無生物(機械)との違いも崩れつつあるのである。
Copyright © 1978, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.