巻頭言
合理的薬物選択法の発展
大月 三郎
1
1岡山大学医学部神経精神医学教室
pp.662-663
発行日 1977年7月15日
Published Date 1977/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405202631
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分裂病や躁うつ病の治療が向精神薬療法を基本とすることに異議のある人は少ないであろう。向精神薬と脳の神経伝達物質との関連が次第に明らかになるにつれて,分裂病や躁うつ病を,脳内の神経伝達機構の異常として理解し,研究していこうとする機運がたかまっている。
治療薬物の作用機序から病因に迫る道が開けてきたことは,内因性精神病の研究の長い歴史の上で,画期的なことである。しかし,一部には,現在の向精神薬はあくまで対症的に作用しているに過ぎないとして,薬物の作用機序から病因に迫ることに否定的な人もある。発熱に対してアスピリンが効くから,アスピリンの作用機序を知ることで発熱の原因,例えば肺炎か膀胱炎かを区別することができないのと同様であるというわけである。しかし,分裂病や躁うつ病の究極の原因はともかくとして,これらの病態連鎖の一環に,薬物の作用機序に含まれる脳内アミンやその他の神経伝達物質が関係している可能性は高いであろう。
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