映画評
—佐々木 正美 監修—みんな仲間 集団の中の自閉児
中川 四郎
1
1聖マリアンナ医科大学神経精神科
pp.584-585
発行日 1976年5月15日
Published Date 1976/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405202492
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自閉症をテーマとした映画は,これまでにいくつか製作されているが,この映画は,前に2編の映画(上出弘之監修,「こどもの自閉症」〈1972〉,「続こどもの自閉症」〈1974〉)を作った独立企画社の森谷玄氏の第3作である。最初の映画は,東大精神科小児部のデイ・ケアに通院している自閉児の行動特徴を描き,その治療教育を紹介しており,第2作は,その子どもたちの何人かの発達の姿を,幼稚園や学校集団の中でとらえたものである。
今回製作された映画は,前2作とは別の子どもたちにレンズを当てたものであるが,自閉児の治療教育の方向としては,その延長線上に位置するものである。このような,半ば学術的といってよいか,あるいは啓蒙的といてよいような映画を作る場合,製作者の芸術的関心とともに,その素材を追うカメラの焦点の背後に,現在の児童精神医学の自閉症に対する一つの見方が存在するのであり,映画は,いわばその視点と治療や教育の理念や技術を,画面を通して物語っているのである。これは,自閉症のような,いまなおその障害のとらえ方に多くの異論があるような対象に対しては,ことに注目されるところであろう。自閉症を障害としてみることに反対する学者さえいるのである。このように考えると,この映画の背後にある精神医学の思考は,監修者の佐々木正美氏によるところが大きいと思われる。
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