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臨時増刊号特集 精神医学における日本的特性
A.精神医療にみられる日本的特性
内観療法に関連して
Cultural Aspects of 'Naikan' Therapy
村瀬 孝雄
1
Takao Murase
1
1国立精神衛生研究所
1Japanese National Institute of Mental Health
pp.1355-1365
発行日 1975年12月25日
Published Date 1975/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405202414
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Ⅰ.内観とは
内観療法は日本独自の広義の精神療法の一つとして,近年,医学領域においても着目されてきた方法である。その特徴については,奥村,佐藤,山本14)(1971),あるいは,佐藤16)(1974)の編による成書に詳しい。この方法では,特に1週間の目覚めている時間のほとんどすべてを内観に当てる集中法が重視されている。集中法の骨子は,周囲から最小限,びょうぶで隔離された狭い空間に身を置いて,自分が過去に深いかかわりを持った人々を1人ずつ選び出し,その人に対して自分はどういうことをしてきたかを3つの観点に立って逐一想起するのである。その観点は,「して貰ったこと」「して返したこと」「迷惑をかけたこと」の3つである。面接者は約2時間おきに内観者のもとを訪れ,その時に調べていることの要約を2〜3分の間聞き,やり方の指導や支持を与えたりあるいは聞き役として援助したりする。
3〜4日目あたりから,内観者は自分がいかに多くの配慮,愛情を身近かな人々から受けて今日に至ったが,それに対して彼のほうからは何のお返しもしておらず,これまで気付かなかった実に多大の迷惑をそれらの人々にかけていたと実感をもって気付くようになる。感謝,負い目,罪の気持が互いに織りなされるように交々湧いてくるにつれ,彼の自己像,他者像にも著しい変化が生ずる。安らぎ,謙虚,希望,償いへの自発的な願いなどが現れてもくる。心身医学的症状の改善が生ずることも稀ではない。
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