Japanese
English
展望
イギリスの精神医療と精神医学
Mental Health Service and Psychiatry in England and Wales
石川 義博
1
Yoshihiro Ishikawa
1
1八王子医療刑務所
1Hachioji Medical Prison
pp.696-710
発行日 1973年7月15日
Published Date 1973/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405202041
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I.序言
イギリス精神医療の特徴の第1は,それが包括的・総合的な社会保障制度の一環として発足した国民保健サービス(1948)のもとで,すべての国民に無料で提供されていることである。第2に精神医学と医療は,ここに初めて他の医学と平等の立場を保障されたことである。第3に,この条件のもとで,1950年代のイギリス精神医療は,作業療法や病棟開放政策さらに治療的共同社会のごとき社会的治療法,向精神薬の発見と導入,コミュニティ・ケアなどの諸手段によって熱狂的に改革されてきた。第4に,1959年成立の精神衛生法は,精神障害者対策の理念を「保安から治療へ」大転換させた。こうした特徴によって,イギリスの精神医学は世界の注目を浴びるに至っている。
しかしなお依然として訓練された職員や適当な施設の不足,精神衛生関係者や当局間の協調の欠如,精神医療の根本政策に関する不一致などの深刻な問題が山積されていることも事実である。とくに各地域における医療水準の発達の差は顕著であり,イギリスの精神医療とは云々,と一括できないほどである。筆者はイギリス精神医学の長所と短所を,できるだけ事実に基づいて報告するつもりである。
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