巻頭言
“Psychiatrieren”
諏訪 望
1
1北海道大学
pp.783
発行日 1972年9月15日
Published Date 1972/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201928
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“Psychiatrieren”という言葉は,もう十数年まえから,私は折にふれて口にしていた。それ以前に誰かが使っていたかどうか,またそんな語を勝手に新作してよいかどうかということも気になるが,それはいまは詮索しない。いずれにしても,これは“philosophieren”をもじったものにほかならない。「哲学」を学ぶことはできなくても,「哲学的に考えること」(philosophieren)を学ぶことはできる,という意味のことをカントが言っている(純粋理性批判)。もちろん私にはその内容を正確に敷衍する能力はないが,そのこともここでは問題にしないことにする。
医学の領域のなかで,精神医学ほどそれぞれの立場が容認され,さまざまな体系が成りたちうる学問はないであろう。そしてそれらの諸体系は,精神医学史の流れのなかでそれぞれ独自の地位を占めてはいるが,どれひとつとして完成された唯一の体系としてわれわれに提供されているものはない。その意味で精神医学は哲学との共通点をもっているとさえいえる。
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