Japanese
English
研究と報告
旅行中に発生した精神障害について
Mental Disorders developed in the Course of Trip
平山 正実
1
Masami Hirayama
1
1東京医科歯科大学医学部神経精神医学教室
1Dept. of Neuropsychiat., School of Med., Tokyo Medical and Dental Univ.
pp.363-371
発行日 1971年4月15日
Published Date 1971/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201734
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I.まえがき
別府市は,波静かな瀬戸内海を前に,名峰由布,鶴見岳など秀麗な山並に抱かれ,風光明媚な観光地として昔からその名を広く知られている。そのため別府市には毎年多数の観光客が訪れる。
筆者は,この別府市にあるA精神病院に勤務している間に,修学旅行や,社会人の観光旅行,新婚旅行,主婦層による団体旅行などで来別し,市内に滞在中,精神障害を引き起こし,警察や鉄道公安室に保護されたり,直接旅館などから連絡を受けた人々を,診察する機会を得た。そしてこれらの症例の中のかなりのものが病像,経過,患者の性格溝造などに共通した特徴を持っていることを知るに至った。彼らの大部分は,旅行直前になんらかの精神身体的負荷をもって出発している場合が多い。旅行中に発生する病像は,躁状態(まれにうつ状態)と軽い意識の混濁を伴いながら漸次非系統的な内容を持つ妄想幻覚状態に進み,さらに重篤な場合は夢幻・錯乱・せん妄状態に移行する。一般に予後は比較的良く回復後疏通性も良く保たれている症例が多い。そしてこれらの症例における性恪特徴は,執着気質(下田)に属する者,および顕示的,愛情欲求的傾向のある未熟な人格を持つ者が多かった。
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