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精神病と遺伝問題—Penrose, L. S.: Discussion on implications of recent genetic research in psychiatry
pp.373
発行日 1962年6月15日
Published Date 1962/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405200442
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精神疾患について生化学的な知見が進んでいるが,生化学的異常を招く酵素変化は染色体に存在する。いままでのところでは染色体の数と形の変化が開拓されているにすぎない。さて正常の常染色体は22対,性染色体は♂XY,♀XXであることが,骨髄・末梢血・上皮・間質の細胞についてそれぞれ確められている。その数の異常ではhaploid(23個),tetraploid(92個),triploid(69個)などが人体のある種の細胞で報ぜられている。aneuploidは植物にはあるが,動物では発育を許さぬようである。染色体の構造が変わつているのは人体でもみられる。さて,知能発育障害・パラノイドをともなうKlinefelter症候群(性腺無形成)では,性染色体がXXYでXが1個多い。時にはYに異常のあることもある。モンゴリズムは肉体的にさまざまの奇形・異常があり,また知能障害をもつが,その常染色体は第21番が3個(trisomy)ある。これはたぶん,配偶子形成時の母親の年令が老いていて,減数分裂のときにXの1個が分裂しないために発生するのであろう。モンゴールの精神機能は精神病に類似している。以上のような染色体異常は偶然発生ではあるまい。随伴体をつけている第13,14,15,21などの染色体では分裂障害をおこしやすいとみえる。第13〜15番あたりの染色体のどれかにtrisomyがあるという先天奇形が見出されているからである。モンゴリズムとKlinefelterとが同一人におこることもある。これはXと21番のnondisjunctionである。母親の年令が老いているためと思われるのは3/4で,残る1/4はたぶん遺伝的と思われる。
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