特集
「精神障害分類についての一試案」に対する批判
村上 仁
1
1京大
pp.284-286
発行日 1960年5月15日
Published Date 1960/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405200215
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〔4〕
ピショ・中島両氏の「精神障害分類についての一試案」は世界の精神病学者が共通に使用しうるような,できるだけ一般的な精神障害の分類方法をつくり出そうという目的でつくられたものである。このような試みが必要であることは誰しも痛感しているが,これが成功するためには,世界各国の諸学派の疾病分類の体系に精通している人が,公平な立場から,分類体系を作らなければならず,本人自身の個人的な見方を強調することは避けなければならない。ここに示された試案も,できるだけ常識的な見方に立つて,世界の精神病学者に広く使用されることを目標として作られているので,やや折衷的すぎる点があるのはやむをえないことであろう。以下に思いついたままに,この試案に対する感想をのべさせていただくことにする。
まず病因的に内因性,精神的外因性,器質的外因性の3群に分類するという方法が,実用的見地からみてきわめて妥当なものであることには異論はないであろう。つぎにおのおのの病因が「発育完成前」に働くか,「発育完成後」に働くかによって区別するという方法は,精神薄弱と器質的痴呆とを臨床的に区別するさいなどには一般に用いられた規準であるので,器質性外因性因子群を2つに分ける場合などにはきわめて自然に感じられるが,心因性因子群もこの規準によつて神経症と反応に区別するというのはちよつと珍らしい。前者は主に性格神経症,後者は現実神経症と心因性反応とを含むことになるが,両者の区別は実際には必ずしも容易ではあるまい。
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