Japanese
English
研究と報告
パーキンソン病の薬物治療経過で認められた抑うつから妄想への変遷―「病いの語り」の崩壊という視点から
Psychosis in a Patient with Parkinson's Disease Treated with Antiparkinson Agents: From the viewpoint of the collapse of “illness narratives”
齋藤 慎之介
1
,
小林 聡幸
1
,
西嶋 康一
1
,
加藤 敏
1
Shinnosuke SAITO
1
,
Toshiyuki KOBAYASHI
1
,
Koichi NISHIJIMA
1
,
Satoshi KATO
1
1自治医科大学精神医学教室
1Department of Psychiatry, Jichi Medical University, Shimotsuke, Japan
キーワード:
Parkinson's disease
,
Antiparkinson agents
,
Delusion
,
Illness narratives
Keyword:
Parkinson's disease
,
Antiparkinson agents
,
Delusion
,
Illness narratives
pp.429-435
発行日 2014年5月15日
Published Date 2014/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405102719
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抄録
パーキンソン病の精神症状に関しては,その病態理解は生化学的変化や神経心理学的変化からの考察が優勢である。しかしながら,パーキンソン病のように長期にわたり患者の人生や考え方に影響を与える慢性疾患の場合は,病気の進行と治療による改善がせめぎ合う体験に対する患者の主観的な理解の変化が,経過に影響を与えることがある。今回パーキンソン病発病後,自責的な抑うつ状態を呈していたが,抗パーキンソン病薬を増量しパーキンソニズムが消褪した直後から,被害的な妄想を抱くようになり,薬剤を中止した後も妄想構築が持続した初老期女性の経過を報告した。妄想主体の精神病症状に関して,抗パーキンソン病薬の影響やパーキンソン病変の進行という器質因子の関与を指摘すると同時に,慢性の病いと折り合うために紡がれた「病いの語り」が,急激な症状改善により崩壊してしまい,その代償として出現した可能性を指摘した。
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