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子ども問題に接したときの支えとなる書
この数年のことであろうか,「広汎性発達障害」「注意欠陥多動性障害」はお茶の間でごく普通に使用される病名になった感がある。子どもの精神医学的問題はその数といい,質といい,ますます深刻の度合いを増しているが,上記の2つはその代表的疾患といってよい。加えて,子どもの精神疾患のカバーする領域の広いことも忘れてはならないだろう。小児科のみならず,教育現場をも直撃しているし,児童相談所をはじめとした地域の生活まで巻き込んでいる。さらには,上記の疾患が成人後になって発見されることが判明してから,成人の精神医学までも震撼とさせている。そして,衝撃の強さ,拡がりの大きさ,あるいは速さは関係領域に少なからざる混乱を招き,厚労省まで動かしたほどである。成人を対象とした一般の精神科医,小児科医,児童関連の仕事に従事する人たちの勉強不足を露呈させてしまった感があるのである。
本書『臨床家が知っておきたい「子どもの精神科」』の初版は8年前に上梓されてよく読まれたようであるが,上記のような疾病構造の急速な変化に対応する目的で,このたび,新版(第2版)が出版されることになったという。ここ10年ばかりの臨床経験を踏まえて,児童精神医学の臨床,専門家養成,研究の面でわが国のリーダーシップをとってきた東京都立梅ヶ丘病院(2010年3月に,府中キャンパスに他の小児病院をも統合して,東京都立小児総合医療センターとして発足した)の関係者を中心に,新しい編者と執筆陣を得ての仕事である。子どもの精神科で具体的にどのような対応がなされているのか,細やかな説明はなんらかのかたちで,これから子どもの精神科とかかわりを持とうとする人たちに限りない安心を与えるに違いない。
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