書評
―佐藤泰三・市川宏伸編集―臨床家が知っておきたい「子どもの精神科」―こころの問題と精神症状の理解のために
中根 晃
1
1東京都精神医学総合研究所
pp.106
発行日 2003年1月15日
Published Date 2003/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405100631
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児童・思春期の精神的問題は,成人の精神疾患をモデルとした精神医学の体系では対応できないことはよく知られている。たとえば,思春期のうつ状態は従来型の抗うつ薬では奏効しきれない。そこに児童青年精神医学の存在意義があるわけであるが,ここで注意したいのは,親は自分の子どもを精神疾患だと思って受診させるのではないことである。そのため,全国各地の小児医療センターに精神科クリニックが開設され,小児医療の一環として運営されている。しかし,スペースやスタッフ機能が十分でなく,全方位の精神科診療を提供しにくいという難点を持っている。本書の執筆者の多くが所属している東京都立梅ケ丘病院は長年,広範囲にわたる子どもの精神科の臨床を実践している。本書はその実績に立って書かれた臨床家のための手引きである。
どの教科書でも,総論ではそのあるべき姿が書かれているが,それはすでに年月を経てしまって,現実とはかけ離れたものになっていることが多い。本書はそれを日常の臨床の中で編集し直して,洗練された形で記述している。
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