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編集後記
MM
pp.1140
発行日 2008年11月15日
Published Date 2008/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405101324
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養老律令(718年)が精神の障碍に対する税と刑の減免措置を定めていたことは現存する文献であり明確である。しかし,その看護には近親者があたるように定められ,家族に過重な負担をかけてきた歴史は1900年の精神病者監護法で私宅監置が認められていたように,連綿と引き継がれてきた。精神障碍と犯罪という二重の苦悩を背負う方々の医療と社会復帰を,1300年たってようやく,国の責任で十分な医療者の手をかけて行うことになった医療観察法が2005年7月に施行された意義はきわめて大きい。施行5年後の見直しを2年後に控える今,医療観察法での医療にはまだまだ解決すべき課題が少なからずあることが指摘される中で,その見直しの議論を深めるべく,オピニオンのコーナーが企画された。
町野教授が指摘しているように,入り口である検察官の申し立ての義務規定(33条)にある「医療を受けさせる必要が明らかにないと認める場合」を検事だけの判断でなく医療との合議制としてどう構築するか,また,立法当初から疑問が集中していた鑑定入院に関する規定をどう明確化するか,林教授の提案される鑑定センター構想も含めて論議する必要があり,これらをどう法文化するかが次の課題となっている。その他,地域医療と福祉サービスをどう構築するか,治療抵抗性の強い,処遇困難な精神障碍者の医療をどう確保するのか/しないことが適切なのか,不処遇決定や終了の決定に対する法整備をどうするかなど,読み応えのあるオピニオンが揃っている。医療観察法の症例に関する具体的な検討結果とこれらの論議との整合性を図りながら,どう改定していくかを明らかにする企画を今後も準備できればと願っている。
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