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Letters to the Editorへの投稿が,その雑誌に対する読者の評価や関心のバロメーターであると理解しておりました。しかし,このたびの「精神医学への手紙」に寄せられた鑑別疾患としての進行性核上性麻痺に関する論文を拝読し,この討論の広場が読者の反響で支えられる雑誌の命であることを再認識させられました。その臨床経験に裏づけられた鋭い指摘,的外れな指摘かもしれないと限界性を論じつつ,その可能性を考察することによる臨床的なメリットへの言及,もともとの著者に対する同じ臨床家としての敬意と配慮などに満ちた文章によって精神科医同士が経験を語り合うことのできる幸いを実感し,本誌がその一翼を担っていることをうれしく思いました。また,前頭葉症状が前景に立つ認知症の診断の奥深さに触れるとともに,死後脳解析などでの病態生理に裏付けられた疾患分類に基づいて議論できる点は本当にうらやましい限りと思ったものです。
この特集で取り上げられている疲労は原因遺伝子や死後脳での組織病理が解明されつつある神経疾患とは全く違って,臨床症状という表現型に基づいて分類している精神疾患と深く関連しますので,その病態生理の解明にはなお長時間を要するといわざるを得ませんが,ご寄稿いただいた論文は読者に現時点での最高の知見を提示してくれていると確信しております。慢性疲労症候群とうつ病との関係は,身体疾患に伴ううつ病なのか,慢性疲労症候の強い身体疾患とうつ病の併存なのかという問題に収斂すると思いますが,サイトカインやステロイドなどの神経機能への影響がいっそう明らかになり,慢性疲労症候群とうつ病とで共通の病態や相違する病態が明らかにされるようになると,診断が細分化され,解決できるのではないかと考えております。その見通しをご寄稿いただいたそれぞれの研究成果が示唆してくれていることに感謝したいと思います。
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