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編集後記
K. Y.
pp.670
発行日 2007年6月15日
Published Date 2007/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405101032
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2007年5月15日の早朝,高校3年生の少年(17歳)が「母親を殺した」といって警察署に自首してきた。持っていたバッグの中には母親の頭部が入っており,切断された母親の右腕が白色塗料で塗られて室内の観賞用の植木鉢に差されていたという。未成年の子どもたちによる親の殺害や未遂事件が,この1,2年,急に目立つようになってきた。警察庁のまとめでは,刑事処分の対象となる14歳以上の子どもによる実父母の殺害事件(未遂も含む)は,これまでは年に3~9件であったが,2005年は17件となり,その後も連続して2桁になりそうだという。犯行の手口や動機があまりに奇妙であり,警察に拘留されると取り調べに淡々と応じ,食事もほとんど食べて就寝しているなどの平然とした態度に,関係者は驚いてしまうという。
今回の事件の直後から,さまざまな専門家・評論家が,この少年についてのコメントをマスコミに発表している。例によって,発達障害,アスペルガー症候群,統合失調症などのさまざまな障害名が登場している。気になることは,コメントをする人々が世界精神医学会の『倫理ガイドライン特別項目』を知っているのだろうかということである。「精神科医は,特定の個人についての精神病理学的推察をメディアに対して断言的に述べてはならない」と明記されているが,倫理観を厳しく求めたものである。心理学者や評論家は,「私は精神科医ではないから」というかもしれないが,果たしてそうであろうか。
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