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非定型抗精神病薬は副作用が少ないことが特徴である。今回オランザピンの投与開始後著しい血清クレアチニンキナーゼ(CK)の上昇を認めた症例を経験した。CKの上昇以外に悪性症候群を疑わせる所見はなく,オランザピンによる横紋筋融解症が疑われた。CKの上昇が数万IU/Lで,ミオグロビン尿症から急性腎不全となり,4日間にわたる持続性血液濾過(continuous hemofiltration;CHF)を行い救命できた。オランザピンによる横紋筋融解症の報告は諸外国では散見される1,3,5)。非定型抗精神病薬と横紋筋融解症について文献的考察を加えたので報告する。
症例
K.T. 46歳,男性。
診断 統合失調症。
現病歴 学生時代は社交的で優等生であった。大学卒業まぢかに突然大声を出すなど奇異な言動と独語・空笑を認め,総合病院の精神科で統合失調症と診断された。内服薬による治療を受け翌年大学を卒業し,証券会社に就職した。数年間は通常勤務を行っていた。29歳で結婚。32歳のとき職場での不適応から会社を辞め,営業職に転職した。しかし徐々に自閉的傾向が出現し,X年1月(45歳)より,仕事のノルマが達成できず,ストレスがたまった状態であった。X年3月職場の人間関係でストレスを感じ退職した。それ以来家族と別居し,実家で母親と暮らすようになった。一日中家にいて,無為・自閉的傾向が強かった。プロペリシアジン40mg/日,レボメプロマジン75mg/日,塩酸プロメタジン75mg/日,ニトラゼパム10mg/日を処方され,服用していた。X+1年3月はじめより食欲低下,無気力が続いていたが,3月29日に反応の低下を認め,母親の要請で救急車にて総合病院に搬送され入院となった。血液検査,頭部CT,髄液検査で異常を認めず,反応の低下は精神科的な状態(亜昏迷)と判断され,X+1年4月1日に当院に転院となった。なお総合病院入院後の3日間は抗精神病薬の内服は中止していた。 現症 来院時意識清明。声かけにはきちんと挨拶できるが,活気がない。顔貌はやや苦悶状であった。体温37.0℃,脈拍73/分整。血圧136/86。食欲がなく,無気力で抑うつ的であった。入院時血液検査・心電図検査では特に異常を認めなかった。オランザピン10mg/日,フルニトラゼパム2mg/日の投与を開始した。翌日の4月2日に赤褐色尿を認めたため,血液・尿検査を施行したところ,血清CKが48,340IU/L,血中ミオグロビンが12,000ng/ml,尿中ミオグロビンが72,000ng/mlと著しく上昇していたので,内服薬をすべて中止した。依然として無気力であったが,意識レベルは清明であった。発熱,発汗,筋固縮,その他の錐体外路症状は認めなかった。再度施行した心電図検査は異常を認めなかった。この時の血液検査データを表に示した。
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