書評
標準精神医学(第3版)
高橋 清久
1
1国立精神・神経センター
pp.107
発行日 2006年1月15日
Published Date 2006/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405100200
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精神医学の“標準”を示す教科書
本書は他の類書に見ない大きな特徴がある。まず第一に,簡潔でわかりやすい表現である。教科書というと重々しい表現で学生が読むには抵抗がある表現をよく見かけるが,本書に限ってはそのようなことがない。第二に精神医学の歴史の記述などに見られるが,物語性があり,読者をあきさせない面白さがある。第三に内容に偏りがない。教科書であるから内容が偏っていては困るのであるが,本書は類書に比べて生物─心理─社会という精神医学の重要な側面がバランスよく取り入れられている。第四に内容が新しい。今,精神医学は多くの新しい知見が蓄積されており,国の施策も大きく変わり,精神医療・福祉の発展が著しい。司法精神医学の新たなスタートである医療観察法も最近施行された。このような新しい内容も簡潔に盛り込まれている。
学習に便利なように,各章に「学習目標」「キーワード」「重要事項のまとめ」を入れてあることも特徴的である。それに加えて,「エビデンス」という囲み記事を入れており,精神科領域のEBMを紹介している。これによって読者は精神医学においてもEBMが重要視されていることを知り,認識を新たにすることであろう。さらに,医学部を卒業して何科に進んでも役に立つようにと,巻末には「プライマリケアのための精神医学」がある。編者のサービス精神がここに極まった感がある。
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