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はじめに
白血病をはじめとする造血器悪性疾患に対して造血幹細胞移植が確立されて30年近くになる。骨髄液を採取して移植する骨髄移植から始まり,1990年代になると末梢血幹細胞移植,臍帯血移植も行われるようになり,移植可能な造血幹細胞のソースが多様化してきた。さらにここ数年は,移植リンパ球によるGVL(graft versus leukemic cell)効果を利用することで,大量抗がん剤投与や放射線照射を必要とした従来の前処置を軽く抑えることのできる骨髄非破壊的幹細胞移植(いわゆるミニ移植)が始まっている。ミニ移植は,重症の臓器障害がある患者,高齢者にも施行することができ,対象疾患も造血器悪性疾患に限らず, 乳癌,膵臓癌,腎癌,悪性黒色腫など固形腫瘍に広がった。より多くの疾患,年齢層の患者が“希望の綱”として造血幹細胞移植を受けることができるようになってきている。
造血幹細胞移植における精神科関与は,当初最も精神障害の合併頻度が高いとされる移植病棟における精神的ケアが中心であった。その後,移植患者は移植意思決定の時期から移植後長期生存期間に至るまで,段階ごとに特有の心理社会的ストレスを抱えており,各段階に応じた心理的サポートが必要であることが指摘されてきた2)。また移植患者数の増大に伴い精神障害を持つケースにおける造血幹細胞移植の報告も増えている。さらに精神科関与は移植患者を対象とするものばかりでなく,移植という先端医療を受けるにあたっての家族の苦悩,血縁ドナーのストレスも指摘されており,適切な心理的ケアのあり方が今後の課題である。また移植医療にかかわる医療スタッフが感じるストレスへの対応も,チーム医療における精神科の役割の一つであると考える。
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