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■最近の動向 急性心筋梗塞,不安定狭心症などAcute Coronary Syndromeの発症には,アテローマの破綻に引き続く冠動脈の血栓性閉塞が関与する(Fuster V, et al:NEngl J Med 1992).血流下で起こる冠動脈血栓の発症には,順次活性化され段階的に濃縮される凝固因子より,血流に抗して血管壁に粘着し,凝集して局所濃度を高める成分である血小板の関与がより重要である.近年の研究により血小板血栓の形成機転が分子レベルで明らかになりつつある.血小板が活性化すると血小板表面上のインテグリンαIIbβ3(血小板膜糖蛋白GP IIb/IIIa)の高次構造が変化して,フィブリノーゲン,フォンヴィルブランド因子(vWF)などの血漿蛋白が結合できるようになる.受容体への血漿リガンドの結合が血小板血栓の形成に至るfinal common pathwayとして注目された.αIIbβ3に結合してフィブリノーゲン,vWFの結合を抑制するマウス由来モノクローン抗体(7E3)のFab部分を,一部ヒトIgGの構造に置換して作成したキメラ抗体c7E3(abciximab)が抗血栓薬として臨床応用された.経皮的冠動脈形成術後の合併症(EPIC, EPILOG),不安定狭心症例での冠動脈形成術後の心筋梗塞発症(IMPACT IDなどに顕著な予防効果を呈し,注目された.経日吸収可能な小分子ペプチド,非ペプチド化合物の受容体拮抗薬も複数開発され,臨床応用されつつある.抗αIIbβ3薬は初めて有効性が確立された抗ヒトインテグリン薬となった.今後,抗がん剤,抗アレルギー薬として各種抗インテグリン薬が臨床応用されることが期待される.
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