巻頭言
Multisegmental atherosclerotic lesions
三島 好雄
1
1東京医科歯科大学
pp.1247
発行日 1986年12月15日
Published Date 1986/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404204967
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戦後もたらされた生活様式,とくに食生活の変化と診断面での進歩によって,近年我が国でも粥状硬化性の病変が著増していることはすでに周知の事実であるが,最近このような粥状硬化が限局性に多発している症例にときどき遭遇するようになった。欧米でも数年前からmultisegmental atherosclerotic lesionsとして注目されているようである。
以前から冠動脈硬化が末梢動脈硬化に合併することは知られており,腹部大動脈瘤を含む血行再建術において周術期死亡の約半数は心筋梗塞によるものとされていたが,Jamiesonらの報告では晩期死亡においてもその65%で心筋梗塞が死因であった。冠動脈造影像から検討したTomatisらによれば,大動脈〜腸骨動脈領域の閉塞で47%,腹部大動脈瘤で75%にそれぞれ少なくとも1枝の冠動脈に有意の閉塞性病変がみられたとされ,また心電図所見が正常であった37例で30%,狭心症・心筋梗塞・心不全の既往のない36例で14%にそれぞれ有意な冠動脈病変がみられたとされている。同様に,Tailorらは末梢動脈硬化症において冠動脈造影像を検討し,既往を含めて冠動脈病変が疑われなかった症例で19%,冠動脈病変の疑われた症例では実に59%の多きに冠動脈に重篤な閉塞性病変をみとめている。
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