巻頭言
人間の保守
阪本 捷房
1
1東京大学工学部
pp.725
発行日 1962年11月15日
Published Date 1962/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404201146
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科学技術の発達は社会を機械化し人力の及ばない分野にまでその機能を進展させて人間生活を益益豊かなものにしている。これは何か新しいものが原理的に生れてから数年或は数十年を経てぴつたり生活に結びついた形に進歩して初めて達成される事である。極めて発展が早いと云われているテレビジョンでもその端緒を辿れば約25年前に既にかなり実用的な実験が行われて居り原理的の時代は40年以上の歴史を持つている。このように実用の域に達するにはかなりの年月を経なければならないのは工学的意味をそこに見出す期間が必要だからである。
工学的に存在価値があるか否かは種々の要素に支配されるがそのうちの一つとして重要な事はその方法或は装置に対する信頼度の問題である。多くのものを作つてそのただ一つだけが役に立つとか,周囲条件が特別に良かつた場合だけ性能を発揮するようなものは工学的には無価値である。従つて工学方面ではその装置がどの位の確かさで働いてくれるかという事に深い関心を示す訳である。そのためには保守という問題を非常に重要視して機能の万全を期している。
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