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TAVIの最新の動向
[1] 海外におけるTAVIの研究・治療の動向
TAVIは開胸手術が困難である,重症大動脈弁狭窄症の症例に対する新たなカテーテル治療として開発された.これまで,大動脈弁に対するカテーテル治療は大動脈弁バルーン拡張術が主流であったが,合併症の頻度に加えて,短期の経過で再発することから広く定着しなかった1).本治療はそのような現状を打開する治療方法として誕生した2).現在,欧米においてEdwards SAPIEN®とMedtronic CoreValve®(図1~4)が主に使用されているが実臨床に導入され,既に5年以上が経過している.次世代のTAVIデバイスも次々に開発され,主にヨーロッパを中心に導入されている.既に5万人以上の症例が欧米においてTAVIによる治療を受けており,その成績は既に臨床治験および各registryから報告されている通り良好な結果を得ている3).本邦においても両デバイスともに臨床治験が行われ,Edwards SAPIEN®については,既に欧米における治療成績と遜色ないことが報告されている.これまで本治療の適応は,いわゆるhigh risk群(開胸手術のリスクが高く手術という選択肢がない)であった.しかし,intermediate risk群におけるTAVIの成績は,AVRと同等であるといった報告がなされ,現在欧米を中心にintermediate risk群におけるtrialが行われている4).このように初めはhigh risk群を対象として始まった治療であるが,カテーテル機器の開発は目覚ましく徐々に適応が拡大されていくものと思われる.一方で,カテーテル治療でしか起こりえない問題点もクローズアップされている.本症例がintermediate riskからlow riskへと適応拡大するにはこれらの問題点を解決していく必要がある.現在カテーテル治療で問題となっている合併症はVARCで定義される合併症である5).主たるものを列挙すると1)脳梗塞,2)血管性合併症(解離,破裂,狭窄など),3)弁周囲逆流,4)完全房室ブロック(恒久ペースメーカー埋め込み),5)弁の耐久性,である.塞栓性合併症,血管性合併症,弁周囲逆流については,それぞれ,protection catheterの開発や,カテーテルの小径化,新たな生体弁の開発(いわゆる第2世代のカテーテル生体弁)によりかなり軽減されるものと思われる.一方で,結論が簡単に出ないのが弁の耐久性である.現在,5年の経過では,中等度以上の弁機能異常は数%程度との報告であるが弁の耐久性が現在開胸手術で使われる生体弁と同等であることが証明されない限り,いわゆるlow risk群,つまりはより若年層にまで本治療が適応拡大されることはないと思われる6).高齢者を治療対象としている限り,長期的なデータが得られない,つまりは弁の長期耐久性が明らかにならない,一方で若年者を本治療法にて治療し長期経過を観察しないことには弁の長期的耐久性が明らかにならないというジレンマを解決しないことには本治療が大動脈弁置換術(surgical AVR;SAVR)に代わる治療にはなり得ないだろう.
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