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CKDと心不全をめぐる最近1年間の話題
透析患者では高頻度に心血管病(cardiovascular disease;CVD)を発症することは古くからよく知られていたが,2003年に米国心臓協会(AHA)および米国腎臓財団(NKF)による「慢性腎臓病(chronic kidney disease;CKD)はCVD発症の独立した危険因子のひとつである」という勧告1)以来,CKDではCVDが多く,そのため生命予後が悪いことが再認識されてきている.臨床の現場では,心不全患者がCKDを有する場合,水分管理の難しさなどから再入院を繰り返すことをよく経験する.一方,CKD患者は,虚血性心疾患(糖尿病患者や高齢者では無症候性心筋虚血が潜在していることも多い),左室肥大による拡張能障害,圧・容量負荷,貧血などの因子により心不全を来し,日本透析医学会の2007年末現在の統計でも,透析患者の死因は心不全が24%で依然死因の第1位を占めている2).このように,心臓と腎臓の病態は強く連関しており,わが国においても2007年5月に日本腎臓学会においてCKD診療ガイド3)が発表されて以来,心腎-腎心連関がますます脚光を浴びている.
心不全患者における腎機能低下とイベント発生リスクをみたものとしては,2006年に発表された59,772名の心不全患者を対象にしたANCHOR(the anemia in chronic heart failure;outcomes and resource utilization)研究が挙げられる4).59,772名(平均年齢72歳,女性46%)の心不全患者のうち,42.6%が貧血であり,MDRD式による推算糸球体濾過率(estimated GFR;eGFR)が60ml/分/1.73m2未満のCKD患者は47%であり,心不全患者の半数近くは貧血および腎機能低下を認めたという結果であった.eGFR>60ml/分/1.73m2の心不全患者と比較すると,eGFR15-29ml/分/1.73m2の心不全患者の死亡リスクはhazard ratio(HR)2.28(95%CI2.19-2.39)で,心不全の再入院リスクはHR1.97(95%CI1.90-2.05)であった.さらに,GFR<15ml/分/1.73m2で透析を受けていない心不全患者の死亡リスクはHR3.26(95%CI3.05-3.49)で,心不全の再入院リスクはHR1.89(95%CI1.79-2.01)であった.また,これらの腎機能低下による心不全患者の死亡リスクおよび心不全の再入院リスクは,収縮能が低下している患者および収縮能が維持されている患者のどちらにおいても認められた(表1).
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