ベクトル心電図講座・2
左室肥大
石川 恭三
1,2
1大和市立病院・循環器内科
2慶大・内科
pp.245-250
発行日 1974年2月10日
Published Date 1974/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402205319
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左室肥大(Left ventricular hypertrophy:LVH)は多くの疾患により惹起されるので,心電図上にLVHを見い出したからといって,直ちにある特殊の疾患を推測することはできません.しかし,ある患者について,全くその基礎疾患が不明な状態で,このLVHの所見を見い出したならば,少なくともその患者の基礎疾患の診断に関する探索範囲を狭ばめられることは確かです。一方,すでにLVHと診断され,その基礎的な疾患が判明している際にも,心電図を用いてfollow upすることにより,LVHの程度の変化,LVHから両室肥大への進展などの経時的変化を知ることにより,基礎疾患の動きを少なくとも,循環器側からは推測できることは事実であり,臨床的に大きな意義があります.
LVHは容量負荷(volume overload)にしろ,圧負荷(pressure overload)にしろ,左心室に負荷が長期間かかることにより生じます.容量負荷をきたす疾患としては,大動脈弁閉鎖不全症,僧帽弁閉鎖不全症,心室中隔欠損症などであり,圧負荷をきたす疾患としては,大動脈弁狭窄症,高血圧,大動脈縮窄症などがその代表的なものです.その他にも,甲状腺機能亢進症や高度な慢性貧血などの際にも,心電図上LVHが認められることがあります.
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