Japanese
English
特集 Acute Coronary Syndromeの病態を解明する
HDLが関与する急性冠症候群防御機構
Mechanisms for Preventing Acute Coronary Syndrome by HDL
三浦 伸一郎
1
,
朔 啓二郎
1
Shinichiro Miura
1
,
Keijiro Saku
1
1福岡大学医学部第二内科
pp.41-47
発行日 2005年1月1日
Published Date 2005/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404100005
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
はじめに
高比重リポ蛋白コレステロール(HDL)の増加は,急性冠症候群(ACS)の発症を抑制し,心保護作用を有する.HDLの主な働きは,末梢組織の余分な遊離コレステロール(FC)を引き抜き肝臓へ輸送するコレステロール逆転送系による冠動脈硬化抑制作用である1).しかし,ACSの発症は,有意狭窄のない部位でのプラーク破綻が多く,その抑制にはHDLの抗炎症作用などHDLの主作用のみでなく,多面的作用が重要であることが推測される.現在,冠動脈疾患の予防・再発抑制治療として,遺伝子治療や再生医療が盛んに進められているが(図1),人工的に作製したHDL(合成HDL)の投与を治療手段として捉え,遺伝子治療や再生医療に並ぶHDL治療という新たな分野の確立を目指す動きがある2~4).さらにHDL治療は,エンドトキシンショック発症ラットモデルにおける改善作用5)や高脂血症患者における前腕血流増加と血管拡張作用6)などの様々な効果も認められている.
本稿では,推測されるHDLによるACS防御機構について概説し,またHDL治療の効果について知ることは,その防御機構を知るうえで有用と思われるため,われわれの最近の知見を含めて検討する.
Copyright © 2005, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.