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疾患の概念と最近の動向
結核菌は,病原性も強く易感染宿主のみならず免疫能に異常のない宿主に主として空気感染し,初感染巣が下気道,肺胞領域に形成される.結核は,背景にHIV(human immunodeficiency virus)の流行,スラム街の形成,TNF(tumor necrosis factor)阻害薬の開発,結核対策の希薄化があり,いまだ先進諸国においてもインパクトの高い疾患の一つである.約90%は肺結核であるが,残りの10%は肺外結核である.結核罹患率が本邦と同程度のスペインからの報告では,TNF阻害薬を使用した1,540例中17例に結核発症を認めており,そのうち65%が肺外結核であった1).近年,生物学的製剤は,劇的な進歩をもたらしており肺外結核に遭遇する可能性がある.肺外結核の一つの病型として消化管型があり,その中の食道結核について述べる.
食道結核とは,食道粘膜への結核菌(Mycobacterium tuberculosis)の感染により,食道粘膜に潰瘍,瘻孔,腫瘤などの病変を形成した病態である.年齢,性別はやや男性に多く全世代に分布するが,40〜50歳代の罹患率が高い.その頻度は,結核死亡患者の剖検の解析で,結核死16,489例中25例(0.15%)2)であり,Welzelら3)の報告では,肺外結核の中で消化管結核は6番目であり全体の1.2%程度,その中で食道結核は約0.2%と報告されており非常にまれな疾患である.その理由としては,食道内腔が平滑で彎入が少ないこと,嚥下運動により菌の付着に至るまでの時間的余裕が少ないこと,組織学的にも扁平上皮から成ること,他の消化管粘膜と比較してリンパ装置が少ないことが挙げられる4).
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