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はじめに 消化管の拡大観察は,竹本(1966)1)の近接拡大観察に始まり,奥山ら(1967)2)が拡大内視鏡を開発して以来,広く行われるようになった.食道の拡大内視鏡観察は,神津ら(1975)3)によって始められ,佐野ら(1974)4),田中ら(1986)5)によっても種々試みられた.筆者ら(1991)6)も犬を用いた実験食道癌で初期小病巣の発見を試みたが,小びらんの良悪性の鑑別は困難であった.また,竹本の示唆により,臨床例で食道表在癌の拡大観察を行い,(1) 表面構造,(2) 上皮下血管網(消失・途絶,口径・走行の乱れ,異常血管の新生,不整点状出血斑),(3) 色素染色後の観察などを検討したが,その困難性( (1) 内腔の狭小,(2) 動きが激しい,(3) 重層扁平上皮,(4) 粘膜上皮を被る病巣など)によりまとめることができず,将来は早期微小病巣の拾い上げ,良悪性の鑑別,T1a-EPとT1a-MMやT1a-MMとT1b-SMの深達度診断,粘膜癌での脈管侵襲やリンパ節転移の有無,SM癌の予後などの診断に寄与するだろうと述べた.
その後,拡大内視鏡機器は著しく進歩し,食道では,Inoueら(1996)7)が粘膜上皮の乳頭内毛細血管のループ(intra-epithelial papillary capillary loop ; IPCL)の観察を行い,さらに早期癌でのIPCLの変化について報告(1997)8)したことは画期的であった.有馬(秀)(1998)9)も同時期に食道粘膜の拡大観察に取り組み,博士論文にまとめており,Arima Mら(2005)10)も食道表在癌の微細血管について検討を行い,特にAVA(avascular area)に注目した.それぞれ,井上分類,有馬分類として発表され,画像強調の普及も相俟って広く注目されるに至った.食道表在癌の発育進展が,微細血管の観察により検討できるようになったことは一大変革であり,食道癌内視鏡診断医にとって大きな喜びであるとともに,患者に福音をもたらすものであると考える.
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