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編集後記
海崎 泰治
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1福井県立病院臨床病理科
pp.1093
発行日 2013年6月25日
Published Date 2013/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403113875
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“カルチノイド(がんもどき)”の名称は,もともと発育が緩徐で転移の少ない予後良好な腫瘍群に対して与えられた.その後,その腫瘍は内分泌性格を有することが示され,分泌ホルモンによる多彩な症状,容易でない悪性度診断,ユニークな組織発生などの特異な性質も相俟って,非内分泌臓器に発生する内分泌細胞腫瘍の代名詞として長い間定着していた.しかし,生物学的態度を限定したこの名称は,類似した組織像だが生物学的態度が異なる腫瘍にmalignant carcinoid(悪性がんもどき)などの明らかなmisnomerをも生み出した.この用語の混乱からWHO分類は2010年に,予後良好な腫瘍を想起しがちなカルチノイドの名称を排除し,NET(neuroendocrine tumor)の名称で内分泌細胞腫瘍を統一した.長い間親しまれたカルチノイドという名称が消滅の危機に瀕しているのである.
臨床的には,カルチノイドは予後良好と考えられるため通常の癌よりも侵襲の小さい治療を行うべしとされているが,かといって不完全な治療による遺残再発で生命を脅かすことがあってはならない.この腫瘍にこそ通常の癌とは違った治療ガイドラインを作成すべきであるが,いかんせん症例数が少ない.
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