--------------------
編集後記
海崎 泰治
1
1福井県立病院病理診断科
pp.1003
発行日 2021年6月25日
Published Date 2021/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403202497
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
欧米ではBarrett食道腺癌の頻度が増加し,食道癌の主組織型となって久しい.本邦でもH. pylori感染率の減少により通常型の胃癌の減少が著しく,Barrett食道腺癌を含む食道胃接合部癌は増加している.しかし,いまだ単施設における症例数は少ないためまとまった検討は少なく,食道胃接合部癌の診断,治療において種々の疑問点が残されている.2017年に本邦で多施設共同研究(EAST)が行われ,食道腺癌の転移リスクが明らかになった.その結果,粘膜下層500μmまでの浸潤かつ,病変径>30mm,脈管侵襲,深層粘膜筋板(DMM)以深の低分化腺癌成分のリスク因子を有さないものが内視鏡的切除の適応として妥当であると示された.また,食道胃接合部腺癌における再検討でも,同様の見解が得られている.本号は前述の結果を踏まえ,食道胃接合部癌の内視鏡的切除の条件に関わる深達度診断,腫瘍の範囲診断,組織型診断を検討することを目的とし,小山,小田,海崎で企画した.
まず,井上論文では食道胃接合部腺癌の疫学について執筆いただいた.臨床的に間違いなく食道胃接合部癌は増加している印象があるが,精密な疫学としては明らかな増加ではないようである.がん登録などで食道胃接合部の部位を特定するコードがないため,食道胃接合部癌を的確に分類できないことが問題点として挙げられている.
Copyright © 2021, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.