私の一冊
「微小胃癌診断―10年の進歩」第23巻7号(1988年)
長南 明道
1
1仙台厚生病院消化器内視鏡センター
pp.1081
発行日 2013年6月25日
Published Date 2013/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403113870
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私が最初に手にとった「胃と腸」誌は,11巻1号「早期胃癌肉眼分類の再検討」(1976年)である.消化器内科医になりたての1986年,オーベン(伊東正一郎先生)から「まず,これを読んでみたら」と手渡されたのがこの1冊である.座談会「早期胃癌肉眼分類の再検討」では肉眼分類の原則,複合型の取り扱いについて熱く討論されており,以後診断に疑問が生じるたびに読み返した.23巻1号「X線・内視鏡所見と切除標本・病理所見との対比(胃)」(1988年)も素晴らしい.X線・内視鏡・EUS所見と切除標本肉眼所見の対比,切除標本肉眼所見と病理組織所見の対比,そのエッセンスが凝集している.この号により,私は切除標本肉眼所見を介して病理組織所見をX線や内視鏡といった臨床画像所見にフィードバックする手法と,その重要性を学んだ.若い先生方必読の号である.
さて,そろそろ“私の一冊”を決めねばならない.これもいいし,あれも捨てがたい.いっそのこと“「胃と腸」,私の全冊”としたいところではあるが,あえて1冊選ぶとすれば第23巻7号「微小胃癌診断―10年の進歩」(1988年)を挙げたい.本号をめくると,切除標本肉眼像はすべて外科手術例であり,内視鏡写真もほとんどがファイバースコープによるものである.現在のハイビジョン電子スコープに比べれば当然画質は落ちるが,病変にかける情熱はひしひしと伝わってくる.なかでも,X線診断において「微小胃癌で悪性を疑わせる所見は胃小区1個単位における段差と先細りである」とした渕上論文は,論旨・写真ともに卓抜している.
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