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Atrophic Gastritis and Its Sequelae―Results of 19~23 Years' Follow-up Examinations: M. Siurala, J. Lehtola and T. Inamki(Scand. J. Gastroent. 9: 441~446, 1974)
著者らは,過去に度々萎縮性胃炎の経過について発表し,癌の発生について触れている.最初は1950年から1954年の間に胃X線検査,内視鏡検査,胃生検,ヒスタミン試験等を行ない,胃癌,胃潰瘍,ポリープ,悪性貧血等を除外できた116例の萎縮性胃炎を対象とした.第1回の経過観察は,1960年,第2回は1965年,今回は1973年と計3回の経過が追跡されている.平均経過観察期間は21年であった.116人のうち34人は,1965年の観察時までに死亡,82人が1973年の観察のため残っていたが,そのうち28人は1965年から1973年までの間に亡くなった.主なものは,胃癌が2人,肺癌2人,卵巣癌1人,結腸癌1人,脳腫瘍1人,原発不明腹部腫瘍1人,心臓血管系疾患15人,その他5人で,1973年1月の生存者は54人,うち36人が検査をうけた.先回のFollow-upで9人の胃癌患者が出,今回1人が加わって,合計10人の胃癌が発生したことになる.新症例は58歳男子.1952年の最初の検査では生検組織で,軽度ないし中等度の萎縮性胃炎で,軽度ないし中等度の上皮異型を伴っていた.1960年の検査を拒否し,1972年X線検査で幽門前庭部から体部まで侵した胃癌を発見.手術標本では腸上皮化生と幽門腺に囲まれた高分化型腺癌で,転移のため1972年に死亡した.その他,ポリープ性病変が前回2例見つかったが,今回は6例,うち腺腫2例,過形成性ポリープ2例,そして軽度の異型を伴った炎症性変化が2例であった.前回の経過観察で発見された胃癌の全例において萎縮性胃炎が先行していた.今回のFollow-upの期間に胃癌で死亡した2例中1例は前回発見された例で,新たに1例が加わった.著者らの最終検査時,萎縮性胃炎は一般に幽門前庭部より体部に強く,Kimuraらの結果と異なっていた.胃癌の局在はおおよそ胃炎の局所解剖に一致し,噴門部に2例,体部または境界領域に4例,幽門前庭部に2例,他は胃全体にび漫性におこっていた.多くはLaurenのIntestinal typeの胃癌で,異型上皮からおこったと考えられる.
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