Japanese
English
今月の主題 胃を除く上腹部腫瘤の診断
主題
腹部腫瘤とX線検査
Tumors in the Upper Abdomen and Radiography
増田 久之
1
,
井上 義郎
1
H. Masuda
1
1秋田大学医学部第1内科
pp.717-728
発行日 1974年6月25日
Published Date 1974/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403111901
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触知可能な腹部腫瘤には腫瘍性腫瘤および非腫瘍性または炎症性腫瘤がある.腫瘍性腫瘤には問題はないが,非腫瘍性腫瘤では,文字どおり腫瘤として触知されるものはよいとしても,肝炎または肝硬変の際の肝腫,あるいは諸種感染症の際の伝染脾または肝硬変の際の脾腫を腹部腫瘤にいれるか否かが問題である.さらに内臓下垂症(Glénard病)の際の触知可能な右腎を腹部腫瘤に数えるか否かが問題である.
このような肝腫あるいは脾腫,触的可能な右腎は,厳密な意味では触知可能な腹部腫瘤にはいるかもしれない.しかし通常はこれらは腹部腫瘤から除外されている.しかし慢性白血病あるいはカラアザールなどの際の大きい脾腫は腹部腫瘤にいれるのが普通である.また肝硬変の脾腫でも著しく大きければ,Banti症候群として腹部腫瘤に数えられることがある.さらに遊走脾および遊走腎は腹部腫瘤に入れられることが少なくない.したがって触知可能な腹部腫瘤の条件として,表面の性状,ことに凹凸の有無あるいは病的変化の有無,腫瘤の大きさなどをあげることもできない.このようなわけで,触知可能な腹部腫瘤の定義には,なおあいまいな点があるのは否定できず,学者によって多少異なるのはやむをえないであろう.
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