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編集後記
望月 孝規
pp.688
発行日 1985年6月25日
Published Date 1985/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403109914
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慢性胃炎の定義は別として,その際の胃粘膜の変化を検索した人々の一致した所見は,最終的に生じる固有胃腺の萎縮,更に腸上皮化生の出現である.実際に個々の胃においては,このような方向に進展する変化の存在部位,程度,拡がりおよび質的差異が明らかにされなければならない.今日では,局在性病変である胃癌や胃潰瘍が見出されぬ場合の除外診断としての慢性胃炎は少なくなったが,しばしば“慢性胃炎のときにはしかじかである”という論文で,胃粘膜変化は具体的に記されずに,単に慢性胃炎として一括されている.また,小さな胃生検標本にもかかわらず,癌や潰瘍性病変がないと,慢性胃炎と記載されることがある.更に,胃粘膜全体の形態学的変化を観察するときに,antralizationとか通常および逆萎縮型のごとき表現に示されるように,比較的検索されやすい幽門前庭部,胃角周辺部や幽門腺領域の病変を主体と考える志向は,特にわが国では行きわたっている.この志向は,中間帯や腸上皮化生の成り立ちや進展についての考え方の中にも存在する.
近来,胃粘膜の中の内分泌細胞を超微形態的,螢光および酵素抗体的に識別する方法が発達してきた.その内容と共に,病理組織学的変化との対比,更には関連が問題となる.本号は,慢性胃炎についての総括ではない.慢性胃炎の定義から始まり,機能的,形態的変化の問題点を明らかにするための第一歩であり,各論文には,著者のはっきりした主張が示されている.したがって各著者の立場や考え方は,必ずしも同一ではない.読者諸賢はこれらの点に御留意のうえ,御精読していただきたい.
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