Coffee Break
SHAYの天秤
五ノ井 哲朗
1
1福島県立本宮病院
pp.491
発行日 1983年5月25日
Published Date 1983/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403109406
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周知のとおり,胃潰瘍の成因については,いまだに定説とされるものはない.数ある仮説の中で,最近,殊に多くの支持を受けているものは,ShayおよびSunによる説であろう.彼らはBockusの教科書の中で,消化性潰瘍のEtiologyの章を担当し,潰瘍の発生に関して,攻撃的に働く諸因子と防御的に働く諸因子とを想定して,前者が優勢に傾く場合に潰瘍が発生し,後者が優性に傾く場合には潰瘍は治癒に向かうという仮説を記述したが,その説明のために掲げられた天秤のシェーマは印象的で,また説得力のあるものであった.
それかあらぬか,この天秤説はたちまち広い支持を受け,更に,攻撃因子や防御因子に新しい内容を加えるなどして,いまや最も有力な潰瘍成因説となるに至った.また,当然ながら,これは治療理論にまで応用され,潰瘍治療剤の薬効は,攻撃因子や防御因子とのかかわりによって論議され,その処方は抗攻撃因子剤と防御因子補強剤の組み合わせとして工夫され,更には個々の潰瘍症例について,攻撃因子型か,防御因子型かなどと論じられる状況となった.
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