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編集後記
武内 俊彦
pp.706
発行日 1982年6月25日
Published Date 1982/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403108964
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近年,直接胆道造影に加えて,US,CTなどの画像が機器の改良,進歩によって著しく向上した.本誌でもこれまで胆道系疾患の臨床として総胆管結石症,胆管異常を取り上げてきたが,今回は早期胆道癌に一度取り組んでみようということで本号が企画された.
早期胆道癌に関しては,いまだ定義も確立されておらず,わが国においても報告者によって見解が異なっているが,この問題をいつまでも避けているわけにはいかない.数は少ないが癌浸潤がmまたはpmにとどまって,切除後の予後も良い症例が術前に診断されつつあることは事実である.本号では早期胆道癌の定義を含めて,臨床,病理の立場から考え方が述べられ,座談会でもその点について論議された.また,主としてmにとどまる興味ある症例が11例呈示されている.しかし,まだ各施設とも深達度mまたはpmの胆道癌症例は非常に少ない.早期胆道癌の実態を明確に浮き彫りにするには更に粘り強い症例の積み重ねと予後調査が必要であろう.消化管の早期癌でも行われてきたように,臨床と病理の密接な連携はどうしても欠かせない.診断面でも胆道鏡,生検を含めた現在ある手法を駆使して,retrospectiveな検討に十分耐えうる画像,データを整えなければならない.一方,深達度に関しても各症例ごとに術中,術後の徹底した病理組織学的な検索が大切となる.いずれにしても早期胆道癌の定義,診断の確立に本号が果たす意義は大きいと考えている.
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