早期胃癌研究会
1991年12月の例会から
多田 正大
1
,
藤野 雅之
2
1京都第一赤十字病院
2山梨医科大学第2内科
pp.259-260
発行日 1992年2月25日
Published Date 1992/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403106742
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〔第1例〕58歳,男性.主訴;下血.胃側へ大きく浸潤した食道癌(症例提供:慶応大外科 佐藤).
診断が難しく,しかも原発巣が胃か食道か興味深い症例であり,時間を延長してホットな討論が続出した.読影は長野(仙台市医療センター)が担当した.食道造影では噴門部に恒常性に狭窄がみられるが粘膜面の変化は少ないこと,胃穹窿部を中心とした浅い多発性潰瘍,粗大な皺襞が読み取れ,通常の胃癌とは異なる発育進展を遂げた胃癌,その食道浸潤と診断した.丸山(癌研内科)は胃病変が通常のスキルスとは異なる画像であることから,食道癌が存在することは認めるにしても,胃病変の読影として悪性リンパ腫や急性膵炎などの炎症の波及の可能性も鑑別上,念頭に置くべきであると強調した.吉田(駒込病院外科),神津(千葉大2外)はヨード染色像で広い範囲の粘膜に不染帯がみられ,しかも下部食道になるほど狭窄が顕著になることなどから,食道原発の癌が脈管浸潤によって胃へ浸潤した像であるという異なる見解を追加した(Fig. 1).結論的には吉田らの意見が正解であった.あまりにも食道病変が小さく胃側の所見が顕著であったため,胃に原発巣があると読影されがちだが,ヨード染色像の忠実な読影が正診につながることを示した症例であった.
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