--------------------
編集後記
下田 忠和
pp.1216
発行日 2003年7月25日
Published Date 2003/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403104235
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
本号では,多くの大腸癌経過観察例の初期病変から浸潤癌にいたる経路が臨床ならびに病理面からかなり解析されている.今まで早期から進行癌までの大腸癌の発育・進展経路はほとんど解明されておらず,数少ない報告では隆起型早期癌から進行癌へ,さらに最近では表面型大腸癌(特に陥凹型)から進行癌への経路が,種々の解析から推測されてきた.今回の経過観察例の解析では隆起型,表面隆起型のmないしはsm1癌からsm浸潤が深くなるにつれ大きくその肉眼形態を変化させた症例が多く,表面平坦あるいは陥凹型からsm浸潤癌あるいは進行癌に発育した症例は極めて少なかった.また病理学的には腺腫由来の大腸浸潤癌も認められたが,これら症例の大きな特徴は粘膜内に高異型度癌を有していることである.すなわち粘膜内病変の大きさに関係なく高異型度癌は早くに浸潤すると予測される.そのことは遺伝子解析の面からも指摘され(藤井論文),粘膜内の高異型度高分化腺癌をより早くに発見することが大事である.pit patternも含めて粘膜内ならびにsmに初期浸潤した高異型度高分化腺癌の内視鏡的特徴像の解析が望まれる.症例呈示と座談会を合わせることで,現時点での大腸癌の発育進展の一面が示されたことは今後の糧として大変貴重なことである.
Copyright © 2003, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.