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“癌は上皮内より発生し,無限の増殖能を獲得する.このため,時間の経過に伴って周囲組織を浸潤しながら早期癌から進行癌,更には全身癌へと進展し,遂には宿主の死に伴って消滅する”というのが癌の自然史についての一般的な理解である.この場合,実質臓器のように,問質が癌巣周囲を取り巻く環境下にあれば,増殖のベクトルは全方向に向かい癌巣は一般的に球状を呈する.しかし,消化管をはじめとする管腔臓器では管腔内に間質が存在しないため,多くの場合は間質に誘導されるように管腔壁の深部方向と水平方向に向かって浸潤し,その結果,主として二次平面的な肉眼所見を示すことになる.加えて,胃などのように消化液の分泌と消化運動が盛んに行われる環境下では,管腔側からの組織破壊も加わるため,管腔側への突出部分(三次元的形態)は更に修飾され,癌巣の肉眼形態としては他臓器ではみられないほど多彩な所見を呈する.
この中で,表層拡大型はとりわけ二次平面的な発育進展を特徴とする癌であり,組織学的には“病巣の大きさの割に深達度の浅い癌”として,また,腫瘍生物学的には“深部浸潤傾向に乏しく側方浸潤を主体とする癌”として位置づけられている.この種の胃癌の存在は古くから知られており,その起源はStout(1942年)の“superficial spreading type of carcinoma of the stomach”の記載にまで遡ることができる.無論,当時は早期胃癌の概念はなく,深達度の定義はなされていないが,感覚的に深部浸潤に乏しいという意味で,mpを越えない15例(5例は早期胃癌に相当)を報告している.一方,わが国では早期胃癌の定義がなされたわずか8年後の1970年に,安井が側方浸潤を主体とする早期胃癌の存在を報告し,長径と短径の積が25cm2以上である早期胃癌を表層拡大型胃癌として明確に定義した.
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