特集 図説 形態用語の使い方・使われ方
第Ⅱ部 検査手技・所見等の用語
b.X線・内視鏡所見用語
Henning's sign(Gothic arch formation of the angulus)
小越 和栄
1
1県立がんセンター新潟病院内科
pp.316
発行日 1996年2月26日
Published Date 1996/2/26
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403103988
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Henning signは現在のアングル機構の優れた胃内視鏡が出現する以前に多用されていた内視鏡所見の記載用語である.
Schindler著の「Gastroscopy」(Hafner Publication Co,1950)では“胃潰瘍が胃角の直上かまたはその直下に存在するとき,その放物線状の輪郭がGothic arch状の特有の変形を示す.Henningが最初にこのサインを記載したため,“Henning's sign”と呼ばれている.また,この所見はangulusのscarの場合もみられる"と記載されており,本邦では1966年発行の,田坂定孝ら監修「胃カメラとその臨床」にも同様な記載がみられる.昔,胃鏡やアングル機構の乏しい胃カメラなどでは胃角を正面視することが困難で,胃角は体部から見下ろす形で観察されることが多く,したがってこのHenning signは胃角部に存在する潰瘍の重要な内視鏡所見であった.しかし,現在はスコープの改良で胃角病変は直接視できるようになり,胃角を体部から眺めて診断する必要がなくなった.更に抗潰瘍薬の進歩で潰瘍部分の線維化も少なくなり,典型的なHenning's signが見られる例は少なくなっている.したがってHenning's signの重要性は薄れており,現在では歴史的な用語となった感がある.
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