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書評「内視鏡所見のよみ方と鑑別診断 下部消化管」
武藤 徹一郎
1
1癌研究会附属病院
pp.790
発行日 2002年5月25日
Published Date 2002/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403103527
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大腸疾患に関する内視鏡の成書はすでに数多く出版されており,それぞれに個性と特色に充ちた名著が多い.しかし,本書はその中でも飛び切りの個性と内容に富んだ,名著中の名著と言って過言ではない.それは28年間,140回に及ぶ大阪の「大腸疾患研究会」の例会を通して,選びぬかれた症例の経験が本書に集約されているからに他ならない.まだ大腸疾患に注意が払われていなかった1973年に,この研究会を立ち上げて以来,弛むことなく症例の検討と集積を継続してこられた,執筆者代表の多田正大博士をはじめとする同志の方々の努力と炯眼に心より敬意を表したい.
本書は4章から構成されているが,第3章の「腫瘍性疾患の内視鏡所見のよみ方と鑑別診断」,第4章の「炎症性疾患の内視鏡所見のよみ方と鑑別診断」の2章が全体の90%を占めている.各章の前半10%はそれぞれ内視鏡診断に必要な腫瘍性疾患と炎症性疾患に関する基礎的事項が要約されているが,これが実に簡潔にして必要十分な情報を含んでいて,他に類を見ないほどである.偽茎(pseudopedicle)を有茎として提示されている報告例が決して少なくない中で,本書ではきちんとその鑑別の要点が記されており感心させられた.しかし,本書の圧巻は何と言っても鑑別診断に提示されている症例の量と質の凄さであろう.見開き2頁の左側に基本スタイルとして4症例,各症例2枚のカラー写真が呈示されている.
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