書評
内視鏡所見のよみ方と鑑別診断―上部消化管 第2版
上西 紀夫
1
1東京大学大学院・消化管外科学
pp.809
発行日 2008年5月10日
Published Date 2008/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402103369
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
もう30年以上前になりますが,教室の前身である東大分院外科で研修していたとき,毎週木曜日に諸先輩や内視鏡診断に意欲のある先生方が症例を持ち寄って内視鏡の読影についての勉強会があり,わからないながらも参加していました.そしてあるとき,当時の順天堂大学教授でおられた城所仂先生から,「内視鏡でいちばん重要なのはGedankengangだ」と教えていただき,この考え方が内視鏡診断の原点となっています.
つまり,内視鏡像を読み取って疾患を診断し,その病変の範囲や病態を頭に描き,そのうえで1枚1枚の内視鏡写真が見る人へのメッセージとなるよう,その疾患がわかりやすいように提示することが大事であるということです.その意味で,内視鏡写真はまさに芸術でありアートです.しかしながら,最近ではコンピュータ上で何枚でも撮影でき,また,消去できるためか,よく考えもせずにやみくもに写真を撮り,その後でゆっくりと見て診断しようという傾向があるように思えます.また,色素内視鏡や拡大内視鏡,NBI(Narrow Band Imaging)などさまざまな方法が開発され,より病変が見やすくなっていることもこの傾向を助長しているように思われます.すなわち内視鏡診断の基本であるGedankengangが少し疎かになっているのでは,と老婆心ながら危惧しています.
Copyright © 2008, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.