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潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis ; UC)難治例の寛解導入に対してサイクロスポリンAや白血球除去療法が使用されていたが,近年,新たにタクロリムス,インフリキシマブの投与が保険承認となった.さらに,寛解維持におけるアザチオプリン,6-MPの使用例が増加し,薬剤放出機序の異なる新たな5-ASA(5-aminosalicylic acid)製剤も保険承認を受けている.また,UCの難治化に関与する因子の検討では,併存する腸管感染症(Clostridium difficile, cytomegalovirusなど)が難治化要因として注目されている.本号の企画の目的は,最新の治療法の位置づけや組み合わせ,難治化の要因を含めた難治性UCの治療の進歩と問題点を整理し,総合的に考える機会を提供することである.
松井は序説にて,UC患者数と難治例の動向,UC難治例の定義と特徴を概説し,UC難治例診療の問題点を浮き彫りにした.平田論文では,難治性UCの最新の治療法の概要を本邦と欧米で比較して解説されている.そのなかで,難治性UC活動期の救済治療として,シクロスポリン,タクロリムス,インフリキシマブはいずれも,短期成績は良好であるが,長期成績は良好とは言えず,約半数が手術治療を余儀なくされると述べられている.藤田論文では,UC難治化要因の1つであるClostridium difficile感染,cytomegalovirus感染について,診断法と内視鏡所見を中心に解説された.両者ともに発症要因に免疫低下状態が関与していることや,難治性UCには両者の混合感染の頻度が高いことも指摘されている.杉田論文では,外科の立場から難治性UCの手術適応について,実際の症例を供覧しながら詳述されている.また,難治性UCの切除標本からみた特徴像として,腸管壁の肥厚,狭小化,短縮および深い潰瘍を伴わない粘膜の萎縮が挙げられている.江頭論文では,初発時の生検組織像と難治化の関連を検討した.その結果,複数の有意な難治化の危険因子と抑制因子を抽出することができ,初発時の生検組織像によるUC難治化予測の可能性を示せたものと考える.
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