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編集後記
松井 敏幸
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1福岡大学筑紫病院消化器内科
pp.203
発行日 2011年2月25日
Published Date 2011/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403102142
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NSAIDs(nonsteroidal anti-inflammatory drugs)は使用量が増加し,低用量アスピリンを含めるとわが国で数百万人が服用していると思われる.ちなみに脳疾患や循環器疾患に対する抗血小板薬は600万人以上が(多くは継続的に)服薬していると推定されている.このような状況から,NSAIDによる消化管傷害のうち消化性(胃・十二指腸)潰瘍では病因の主役になりつつある.また,下部消化管疾患に対するNSAIDsの影響も明らかになりつつある.その中で小腸病変がどの程度生じ,どの程度臨床症状を呈するか,あるいはその傷害を臨床的にどの程度診断できるかは大変興味ある話題である.
近年,カプセル内視鏡やダブルバルーン内視鏡(double balloon enteroscopy ; DBE)検査により小腸病変を的確に診断する技術が開発され,その病態が臨床的に解明されつつある.臨床的にはOGIB(obscure gastrointestinal bleeding)として発症し,その診断過程で原因にたどり着くことが多い.NSAID起因性腸炎の診断基準も確立してはないが,多くは原因薬剤の排除により治癒過程を辿る.また,小腸病変は意外にも多彩な形態を呈し,なかには非特異的な像のみからなる場合もあり,必ずしも特異的な変化を来すものばかりではないようである.その詳細が本号で解析されることが期待される.
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