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編集後記
松井 敏幸
pp.1634
発行日 2009年9月25日
Published Date 2009/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403101770
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本号は,潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis;UC)の初期病変の解明という視点で編集された.すなわち,現時点でCrohn病の初期病変は全消化管のアフタで発生し,その後比較的緩やかに典型的な病変へと進展する.その経過は十分に解明されていると思われる.この状況に比べ,UCの初期病変の理解は極めて不十分である.わずかにアフタ様潰瘍や濾胞性炎症などが,それに相当すると推定されているが広く認知されてはいない.その理由は,おそらくUCの初期病変が急速に発生し進展するためであろう.また,これに加えてUCでは,大腸以外の上部消化管にも軽微な病変が生じることがわかりつつある.その一部はびまん性病変であるが進展は着実ではない.病変の消長があるため,臨床で連続的にとらえることには成功していない.小腸内視鏡などが非侵襲的に施行できるなら,小腸病変は今後解明されることであろう.さらに,今後大きな問題になる回腸嚢炎も含めた続発性小腸病変の実態についても,その進展は十分には解明されていない.本号では,これらの興味深い問題に対する解答が得られるであろうか.組織学的にも十分に議論して,UCが全消化管の病変なのか否か考えなければならない.そのために今回,UCの初期病変の研究発展に向けて問題点を絞る論文が寄せられたと考える.読者がこの趣旨にかなう論文が寄せられていることに同意するなら,編者としてこれ以上の喜びはない.今後,本号の論文が基礎的な研究の進展につながればとも考える.
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